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最高裁判所第一小法廷 昭和29年(あ)287号 判決 1960年9月29日

主文

本件上告を棄却する。

理由

被告人本人の上告趣意について。

集会、集団行進及び集団示威運動が、表現の自由として憲法によって保障さるべき要素をもっていること、及び、昭和二五年一一月二一日京都市条例六二号、集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例(以下公安条例という)が、道路その他の公共の場所で集会もしくは集団行進を行おうとするとき又は場所のいかんを問わず集団示威運動(以下単に集団行動という)を行おうとするときは、公安委員会の許可を受けなければならないと定め、これら集団行動を事前に規制しようとするものであることは所論のとおりである。

けれども右公安条例を仔細に検討するに、本条例は集団行動について、いずれも公安委員会の許可を要求しているが(一条)、公安委員会は、集団行動の実施が「公共の安寧を保持する上に直接危険を及ぼすと明らかに認められる場合の外は、これを許可しなければならない」と定めて(三条)許可を義務づけており、不許可の場合を厳に制限している。従って本条例は、規定の文面では許可制を採用しているが、実質においては届出制とことなるところがない。このような内容をもつ公安条例が憲法二一条の規定に違反するものでないことは、さきにこれと殆んど同じ内容をもつ東京都公安条例についてした当裁判所大法廷の判決の示すところである(昭和三五年(あ)一一二号、同年七月二〇日大法廷判決参照)。それゆえ所論違憲の主張は採るを得ない。

よって刑訴四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 高木常七 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 入江俊郎 裁判官 下飯坂潤夫)

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